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最強のエンターテイメント「菅義偉政権」で総理の菅さんの影が薄い件で

【連載】山本一郎「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」

 

■よもやよもやのガースー長男を窓口にした官界工作!?

  

 一方で、東北新社と言えば知る人ぞ知る、ある種の政官界タニマチ企業のひとつであって、放送から広告、コンテンツ投資の世界まで、古き良き日本の放送産業の一角を支えてきた老舗企業のひとつです。気の利いた政治家の勉強会や励ます会でもあると、なにかと参加者リストの中に誰かしら東北新社の人のお名前を見かけることも多かったわけですが、ある種の政治道楽とも言える創業者植村伴次郎・徹父子の没後は特に、最近界隈で東北新社の人たちを見かけることも少なくなっていたように思います。

 

 その水面下で、よもやよもやのガースー長男を窓口にした官界工作をやっていたとは露知らず、文春砲で菅正剛氏の名前を見てビックリして腰を抜かし救急車で運ばれる人も多数だったのではないかと思うのですが、いやー、知らなかったな。それでも今回は内閣広報官にまで成り上がっていた山田真貴子さんまで国会に招致されて質問されてしどろもどろになっていたのを観ますと、たかが一回7万円の会食とは言え、やってしまったものは仕方がないということで減給などの懲戒処分となるのは当然だと思うんですよ。

 

 もちろん、菅義偉さんも総理就任時にはあれだけ「自助 公助 共助」と言い、今回も成人した長男・正剛さんとは別人格を強調する一方、対役人の接待でよりによって官邸人事を掌握する菅義偉さんの息子が出てくることのインパクトを考えれば一定の配慮、斟酌があることを期待して正剛さんを接待役に置いていたことは否定できないでしょう。

 

 さらには、我が国の放送・通信業界全体において言えば、現在世界で全盛となっているデータエコノミーで我が国の情報産業に対する戦略をいかに適切に立案していくのかは喫緊の課題で、霞ヶ関ではDXを叫ばれ官公庁のデジタル発注一本化のためにデジタル庁まで作って盛大に人材募集をやっています。そういう我が国のデジタル再興において、総務省が抱える通信産業(テレコム)はデータ資本主義の屋台骨であって、同じく国民の資産である電波帯をテレビ・ラジオなどの放送分野と競合する中でどういう政策を取るのが合理的か、考えなければならない時期に差し掛かっていたはずです。

 

 衛星放送にしても、かつての多チャンネル放送が必要であると考えられていた時代はいまは昔、相応の規模のインフラ投資が継続的に必要な衛星放送はいまやインターネット放送にとって変わられ、お題目となっていた「通信と放送の融合」は「通信が放送を呑み込む」時代に差し掛かりました。国内地上波各局もテレビ局としての放送事業収入よりも不動産事業のほうが大きくなり、こと東北新社はこれらの経営環境の激変で一番最初に本業の状況悪化が懸念される企業のひとつでもあります。

 

 いまや、多チャンネルどころか大量で多様なコンテンツがスマホに届く時代に、古き良き料亭での接待で行政が曲げられてしまうことがあるのだとするならば、これは単に特定の官僚の脇が甘いので懲戒処分でござるという話ではないのでしょう。現在の総務省のなすべきことや役割を見つめ直し、国民にとって何が利益で、国富を積み上げるには何を為すべきかという原理原則に立ち返って改革をする必要があるのではないかなあと思います。

 

 言うなれば、総理たるガースーがスダレ髪を振り乱してご長男ごと東北新社を真っ二つに斬り捨てるぐらいの迫力をもってその存在感を確固たるものとして欲しいとすら願うところであります。

 

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山本 一郎

やまもと いちろう

著作家、ブロガー、投資家、経営者

1973年東京都生まれ。著作家、ブロガー、投資家、経営者。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2000年IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。著書に『情報革命バブルの崩壊』『俺様国家中国の大経済』『ネットビジネスの終わり』ほか。   ブログ「やまもといちろうオフィシャルブログhttps://lineblog.me/yamamotoichiro/  

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